EA開発者の心得


EAはトレーディングロジックの集合体であるため、開発者以外にとって、EAはブラックボックスである。
よって、自身がEA開発者ではない場合、投資資金は開発者の善意に預けていると言っても過言ではない。
しかし、善意があっても実力がないケースも存在する。
両者を高いレベルで確保することが、EA開発者にとって重要なことである。

本稿では、EAの開発プロセスにおいて最も重要であるEA開発者の心得について、我々が正しいと信じる考え方を提示する。

まず、搭載するトレーディングロジックは、少なければ少ないほど良い。
100のトレーディングロジックにより構成されるEA-1と、
1つのトレーディングロジックにより構成されるEA-2におけるトレード数が同じ場合、
バックテストの結果、同じPFが得られたとしても、統計確率的な優位性が高いのは、EA-2である。

この理由は、プロ野球を例にするとわかりやすい。

生涯成績が2勝1敗の投手1000人を集めたAチームの先発投手陣と、
生涯成績が200勝100敗の投手10人を集めたBチームの先発投手陣を考えたとき、
全員の成績のトータルは2000勝1000敗で同じも、より勝てるであろう先発投手陣はBチームであることは誰もがわかる。

Aチームは三流選手を寄せ集めてチーム全体の見栄えを保っているだけで、内容は薄い。
Bチームは一流選手を集めているため、内容は濃い。

これは、EAについても同じである。

バックテストでの実績が薄いトレーディングロジックを寄せ集めて、EAの見栄えを保っているのが、EA-1
バックテストの実績が濃いトレーディングロジックのみを用いて、真の姿をさらけ出しても恥ずかしくないのが、EA-2

ということである。

目の前にあるEAが、EA-1なのかEA-2なのかは、開発者以外にはわからない。
これが投資資金は開発者の善意に預けているという所以である。

EA開発者は、トレーディングロジックを寄せ集める作業に注力するのではなく、
頑健なトレーディングロジックを見つける作業に注力しなければならない。

では、頑健なトレーディングロジックとはどのようなものか。

EAに搭載されるトレーディングロジックは、経験から具体化され、プログラミングされる。
起点となる経験は先達の経験か、自身の経験かによりその後の開発プロセスが大きく異なる。

先達による経験は、トレーディングロジック自体は既に具体化されていることが多く、プログラミングは容易であろう。
しかし、先達の経験は自身の経験ではないため、パラメータが具体化されておらず、そのままの状態で勝てない。
つまり、プログラミング後に到来するパラメータの最適化作業に骨を折ることになるだろう。

自身の経験は、まだ具体化されていないことが多く、プログラミングのために具体化することが必要であろう。
しかし、自身の経験は、最適なパラメータも想定できていることが多く、最適化作業はスムーズかもしれない。

ちなみに、自身の経験を基にしたトレーディングロジックはよほどの熟練者でない限り、不可能に近いはずなので、基本的には先達の経験を元にトレーディングロジックを開発していくことになるであろう。

先達のトレーディングロジックの例を以下に挙げる。
筆者は、例に挙げるトレーディングロジックを検証したことがないため、勝てるかどうかは知らない。
よって、開発プロセスを提案することはできるが、トレーディングロジックの優位性についてはコメントできない。

例) 移動平均線(MA)のゴールデンクロスで買い、デッドクロスで売り。

プログラミングは別の項に譲る。
検証すべきパラメータは、移動平均線の本数と期間である。
本数と期間のパラメータを順番に振っていって、さらにパーフェクトオーダーが必要かどうかなどを考慮せねばならない。
もちろん初めは、2本の移動平均線の検証から始める方が良い。
トレーディングロジックはシンプルであればあるほど頑健である。

なお、このトレーディングロジックだけでは良い結果は得られないかもしれない。
次にやりたくなるのは、『負けトレードを消す』ためのフィルターの導入である。
例えば、MACDやストキャスティクスを入れたくなる人は多いだろう。

しかし、このようなフィルターは曲者である。
フィルターを導入するということは、トレード数が減ることを意味し、統計確率的な頑健性は低下する。
トレード数が減ったEAは魅力に欠けるため、更なるトレーディングロジックを入れたくなる。
つまり、先のプロ野球を例に挙げると、先発投手陣を増やすことを意味する。

世に出回るEAの多くは、一本のトレーディングロジックでは、フィルターの影響でトレード数を稼げず、複数のトレーディングロジックを寄せ集めてトレード数を稼ぐことにより、統計確率的な頑健性を高く演出している可能性がある。
真相はEA開発者のみが知るブラックボックスに他ならず、ブラックボックスの真相は投資家の未来の口座残高によってのみ明らかとなる。

EA開発者は、善意をもってEAを開発し、投資家とwin-winの関係を築けるよう常に心がけなければならない。
そのためには、EA開発者は、自身の実力向上のみならず、モラルの確保にも留意せねばならない。
それが本邦の金融立国につながり、国益につながり、EA開発者自身にも返ってくるのである。

筆者が開発を担当した

W2C-Angely,
W2C-Zelinsky,
W2C-Socute,
W2C-Ginzooo,
W2C-Tiger,
W2C-Ichiro,

は、この心得が反映されているEA群である。

 
FX